縁に恵まれている僕たち
「老後は、南の島でゆっくり暮らしたい」という人は多い。
南の島でなくても、日本で田舎暮らしがしたい人は多いらしい。
どちらかというと、男の人が多いんだろうか。田舎暮らしに憧れる人は。
長年の会社員生活に疲れ、老後を夢想する数年は案外楽しいのかもしれない。
いま僕たちはバリ島にいる。だれがどうみても南の島だ。
ヤシの木はある。空は青く高い。日差しは強いが、島風が心地いい。
日本にはないフルーツがたくさんあるし、狂犬病を持ってそうな野良犬はいっぱいいるし、街の空気はきれいとは言い難い。
どの家にもチャナンがお供えされていて、お祈りをする人の姿がみえる。
観光地ほど押し売りは多いし、売店に定価はない。
なんだか不思議なことは起こるし、「あ、神っているんだな」と思えてくる島。
スピリチュアルな要素と、東南アジアのマンパワー溢れる要素が入り混じった島。
多くの人が夢見ている島に、僕たちはいま住んでいる。
まだまだ夢の途中だけど、「バリに住んでる」というだけで羨ましがられることもある。
といっても、別に羨ましがられるためにいるわけじゃない。
僕たちは、「バリ生活」を夢見ている人が想像する暮らしとは、ずいぶんかけ離れた生活をしているはずだ。
海の見える家、はない。
けど、車かバイクで20~30分行けば海がある。
メイドさんがいるプールか庭付きの大きな家、はない。
掃除は自分たちでするし、プールも庭もない。
家は2人では少々大きい。持て余してる。
毎日マリンスポーツ、なんてしてない。
というか、マリンスポーツは一度もしていない。
けど、海を見るのは好き。泳ぐのも好き。
夜はバーやクラブで、なんて縁遠い世界だ。
日が落ちてから出歩くことはほとんどない。
大抵は家にいるし、行くところといえば、近所のランドリーや市場、それにコンビニくらいだ。
さぞ退屈だろうと思うかもしれないけど、当人たちは退屈なんて感じていない。
老後が来るかどうかもわからないのだから、「暮らしたい」と思ったら早く実現させた方が良いと思うのだ。実現できる環境にあるのなら。
実際に暮らさないとわからないことも多いし、思いがけない縁が生まれることもある。
「現世で起こることには、すべて意味がある」とは思わないので、きっと意味のない出会いもいっぱいあるだろう。
けど、意味があるかどうかを見極めるのは自分次第。縁を育てて芽が出るかどうかも自分次第だ。
どうせなら、縄文杉みたいな大木に育てたい。